ジハードとしてのスター・ウォーズ、あるいはジハード戦士としてのルーク・スカイウォーカー

スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望 (字幕版)

昨今はイスラム国がらみの話題が多いので、イスラム教やテロリズムに関する本をぱらぱらと読むことが増えてきた。

そんな程度の付け焼き刃なので大したことは言えないのだが、いろいろ読んだ上での個人的結論としては、イスラム教がテロリズムと全く無関係かと言えばそんなことはないと思うが、かといってイスラム教「だから」テロが起こるというのも短絡的ではないかと考えている。イスラム教に特殊な事情というのがあるのは事実だと思うが、他の宗教にも多かれ少なかれ似たような事情は存在するからだ。ちなみに世の中には面白い人がいて、聖書、クルアーン、モルモン経を子細に検討し、その中の矛盾だったり不寛容だったり残虐だったりミソジニーだったりといった、今ではあまりポリティカリーにコレクトとは言いがたい記述をリストアップしたサイトを作っているのだが、それを読むとどの宗教の経典にも字面通りとれば結構ムチャクチャな記述が多いことが分かってなかなか興味深い。まあ、仏教やヒンズー教の経典も、同じように探せばいろいろとアレな記述は出てくるのではないかと思うが…。それに、カルトというのは、大体が経典の一部を自分たちに都合の良いように拡大解釈して権威付けに使うものでもあろう。ちなみに計量的比較(笑)によると、クルアーンは数だけ見れば大体聖書の2倍くらい暴力描写が多いらしい。しかし、聖書も特に旧約には相当えぐい記述はあるし、裏を返せば聖書にしてもクルアーンの1/2くらいは暴力描写があるわけだ。もちろん、重要なのは数ではなくその残虐さ度合い、とも言える。

ようするに、カギとなるのは宗教の教義ではなくて、具体的な過激化(ラジカライゼ―ション)の過程のほうなのではないかと思うのである。経典に敵を殺せと書いてあるのと、実際に行動を移してテロを起こすのとには、やはり大きな断絶がある。そこがよく分からない。

ちょっと調べてみた限りでは、人がどのようにラジカライズされるのかということについて、まだそれほど研究は進んでいないようだ。それは単純な理由で、本当にラジカライズされて行動に起こしたテロリストは大概の場合死んでしまうので、ラジカライズされた過程に関する遡った調査が出来ないからであろう。とはいえ、ラジカライゼーションのコツというか定石というか、そういったものは少しずつ分かってきているようなので、裏を返せばどこにどうくさびを打ち込めば過激化を防げるのかも今後明らかになってくるように思う。

ちなみに最近読んで笑ったのが、「ルーク・スカイウォーカーのラジカライゼ―ション:ジェダイのジハードへの道」という記事で、映画スター・ウォーズの特に最初の3部作のシナリオが、イスラム過激派の典型的なラジカライゼ―ションの過程にそっくりだという。

新たなる希望

  • 世界は帝国の圧制下にある。まあ帝国には帝国なりの言い分があり、宇宙の平和を守るために日々苦心しているだけなのだが。
  • 田舎に青年がいる。親はおらず、友達もいない。
  • しがない青年は、育ての親を帝国の理不尽な攻撃で黒焦げにされて殺される。
  • 近所の狂信的な老人にリクルートされ、怪しげな思想というか宗教を吹き込まれた青年は老人と一緒にテロ活動に身を投じる。おまけに老人は、青年の実の親は帝国に殺されたと嘘をついてショックを与え洗脳する。これは後に明かされることだが、老人は青年を洗脳することにかけては長年の経験がある。
  • 多数の犯罪歴がある密輸業者の手助けでテロリスト支配地域への脱出に成功する。テロリストのキャンプで老人らから専門的な軍事訓練を受ける。青年はテロリストらに仲間として受け入れられ、世界に居場所ができる。
  • 老人が帝国との戦いで殉教する。
  • 帝国のシンボル的な建造物へテロを敢行する。たまたま生還できたが基本的に自爆テロみたいなものである。
  • これは後に明かされることだが、帝国は帝国で別の怪しげな宗教を奉じていて、老人らの宗教とは(実は似たようなものなのだが)対立関係にある。なので、これはある意味宗教戦争でもある。老人らの宗教は迫害されている。

帝国の逆襲

  • 帝国のテロリスト狩りが激しさを増す。
  • さらに別の狂信的な老人が出てきて、青年に絶対的な忠誠と思想の厳格な解釈をたたき込む。青年は自立した思考が出来なくなり、完全に洗脳される。青年は聖戦を戦うジハード戦士となる。
  • 実は青年の実の父親は帝国の大物である。父親に会った青年は、改心してこっちへ戻ってこいと言われる。

ジェダイの帰還

  • 青年は宗教に基づき、暴力で自ら物事を裁断するようになる。
  • 青年は仲間が借金したビジネスマンを殺害し、一家を惨殺する。まあ手を下したのは厳密には青年ではなく青年の妹だが。
  • 帝国が(よせばいいのにまた)作ったシンボル的建造物をテロ攻撃する。これもまたあまり生還のことを考えていないというか、自爆テロ的な計画である。
  • 青年は父親まで殺す。
  • 青年は帝国のトップも殺す(まあ厳密には殺したのは父親だが)
  • 帝国は消滅し、邪教は消え、青年らの宗教に統治された平和で幸せな世界が訪れる

まあジョークではある。ただ恐ろしいのは、このジョークが一面で真実を突いているのではないかと思われることだ。というのも、実のところイスラム国に限らずある種の過激派に参加する連中というのは、意識しているかどうかは別に、わかりやすい具体的なイメージとして「スター・ウォーズ」あたりを抱いているのではないだろうか。オウム真理教が、よく「宇宙戦艦ヤマト」を引き合いに出していたのが思い起こされるのである。

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